2010/10/12

Low-carb diet_or_Low-fat diet???


米国・ペンシルベニア州フィラデルフィア・テンプル大学医学部のGary Foster教授らがAnnals of Internal Medicine 8月3日号に発表した研究で、Low-carb dietの方がLow-fat dietよりもHDLコレステロール値などの点で優れており、心臓血管障害のリスク要因を改善するのにプラスであることがわかりました。
教授らは肥満患者307人(平均年齢45.5歳、平均BMI値36.1)をLow-carb dietグループとLow-fat dietグループの2グループに分け、食事以外の肥満患者に対する行動療法を組み合わせて(食事以外は2グループとも同じ内容)2年間継続して治療、減量させて結果を分析しました。
その結果患者は、最初の1年で平均約11kg、2年目に平均7kgの減量に成功しました。減量の結果に関しては2グループに違いはありませんでした。また骨密度、体組成にも違いは見られませんでした。

しかしながらHDL(善玉)コレステロール値のレベルはLow-carb dietグループの方がLow-fat dietグループよりも約2倍も増加していました(23%対11%)。この結果から教授は減量に関してはどちらを選択しても2つのダイエットに違いはないけれども、HDLコレステロール値が低い肥満者はLow-carb dietを選択したほうが良いことは明らかになったとしています。
均年齢45.5歳の肥満者307人が対象になりました。平均BMIは36.1ですから、かなりの肥満です。

Low-carb dietの群では、炭水化物の摂取を20g/日に抑え、脂質とタンパク質は自由に摂りました。これを3ヶ月実施し、炭水化物の量を徐々に増やしながら、目標体重になるまで継続しました。

Low-fat dietの群では、カロリーを1200~1800カロリー/日に抑え、脂質からのカロリーはその30%以下にしました。どちらのダイエットも行動療法と組み合わせました。これを2年間行いました。
すると体重減少は、どちらのダイエットを行ってもまったく差は無く、1年目に11kg(11%)、2年目に7kg(7%)、それぞれ減少しました。体格や骨密度にも違いはありませんでした。
しかしLow-carb dietでは、拡張期血圧がより低下し、中性脂肪も低下し、VLDLコレステロールも低下しました。またHDLコレステロールはLow-fat dietよりも試験期間中を通して有意に高まり、2年後には23%高くなっていました。


この結果から見ると、どちらかといえばLow-fat dietよりもLow-carb dietのほうが好ましいようです。
Low-carb dietLow-fat dietを2年間比較した報告があります(Randomized parallel-group trial.:ランダム平行群トライアル(ClinicalTrials.gov registration number: NCT00143936)。
307名、平均年齢 45.5歳 (SD, 9.7 years)、平均BMI 36.1 kg/m2 (SD, 3.5 kg/m2)。プライマリアウトカムは、2年時点の体重。セカンダリアウトカムは、3・6・12ヶ月後の体重、脂質濃度、血圧、尿中ケトーシス、症状、骨密度、体組成です。

最初の6ヶ月間では、Low-carb dietの方が拡張期血圧、トリグリセリド、VLDLコレステロール、LDLコレステロール値が大きく減少しました。
体重減少は、1年後では約11kg(11%)、2年後は7kg(7%)で、体重および体組成、骨密度に群間に差はありません。また、Low-carb dietはHDLコレステロール値を増加させ、2年後では23%増加させました。
しかしながら、HDLコレステロールが増加したからといってLow-carb dietが優れているとは言えません。「LDLコレステロール悪玉、HDLコレステロール善玉」などと言った、過去の誤った通説は、医学的には既に否定されています。(今でも、薬を売りつける為に言い続けている医師や、製薬会社・飲料メーカーによる詐欺的なコマーシャルは相変わらず放映されていますが)

私は以前に、「超Low-carb diet」が優れているとする報告を紹介しましたが、この研究を見た限りでは(超ではないものの)、体重の減少に差は無くLow-carb dietがより有効とは言えない様です。
「ダイエット法」についての議論は後を絶ちませんが、そもそも、総摂取カロリーと消費カロリーの収支問題に過ぎません。極めて単純な理屈です。騙して、商売にする輩は後を絶ちませんが。